100億宣言とは?中小企業成長加速化補助金を支援してもらう手順を解説

「100億円宣言」は、文字通り売上高100億円を目指す中小企業向けの新制度です。

しかし、宣言の様式や要件、GビズIDの取得など準備も多いため、戸惑う方も多いでしょう。

本制度で支援を受けるには、自社の状況に合った内容で宣言を行い、正しい手順で補助金申請を進めることが重要です。

本記事では、「100億宣言」とは何かから、必要な宣言内容、中小企業成長加速化補助金の概要や申請手順、申請時の注意点まで、わかりやすく解説します。

目次

100億宣言を行うと中小企業成長加速化補助金を支援してもらえる

100億円宣言を行うことで、中小企業成長加速化補助金の支援対象となり、大規模な設備投資に対する国の補助を受けることができます。

中小企業成長加速化補助金は、100億円宣言企業を対象に工場の新設や生産性向上のための機械導入など、企業の大胆な成長投資を支援する制度です。

補助上限額は最大5億円(補助率1/2)と非常に手厚く、企業の飛躍的な成長を後押しします。

また、100億円宣言を行った企業は補助金以外にも、公式ロゴマークの使用や経営者ネットワークへの参加など様々なメリットを享受できます。

100億宣言と補助金の概要

1「100億宣言」で必要な宣言内容
企業の成長計画をまとめた宣言書を提出し、具体的なロードマップと経営者の強い意志を示す内容が求められる


2中小企業成長加速化補助金の概要
2025年度補正予算で新設された大型補助金で、売上10億円以上100億円未満の中小企業が対象となる

「100億宣言」で必要な宣言内容

100億円宣言を申請する際には、企業の成長計画をまとめた宣言書(計画書)を提出します。

宣言書には、主に次のような項目を盛り込む必要があります。

記載項目詳細
企業概要・現在の売上高
・従業員数
・事業内容など基本的な会社の情報
売上高100億円実現の目標と課題・達成年
・数値目標
・ターゲット市場
・現状の課題点
売上高100億円実現に向けた具体的措置・目標達成のための具体策(生産増強、新事業、海外展開など)
・課題の克服方法
実施体制具体策を実行する社内・プロジェクト体制
経営者のコミットメント経営者自身による宣言の意義や決意表明のメッセージ

100億円という高い目標に対する具体的なロードマップと、経営者の強い意志を示す内容が求められます。

作成した宣言内容は後述のポータルサイト上で公開されるため、社内外へのPRになることも意識して練り上げましょう。

中小企業成長加速化補助金の概要

中小企業成長加速化補助金は、2025年度補正予算で新設されたばかりの大型補助金です。

日本の中小企業から年商100億円超の企業を数多く育てることを目的としており、政府の成長戦略の中核的な施策の一つに位置づけられています。

概要は以下のとおりです。

補助対象の企業

売上高10億円以上100億円未満で、将来的に売上100億円超の達成を目指す中小企業が対象です。

具体的には、直近の決算書で売上高が10億円以上100億円未満であり、「中小企業基本法」等で中小企業と認められる企業であれば応募できます。

中小企業基本法とは?
中小企業の範囲を業種ごとに資本金の額または従業員の数で定義する法律。補助金の対象者判定の基準になります。

100億円宣言を行っていることが前提条件であり、宣言なしには補助金の申請はできません。

補助金を受けるための追加要件
  • 専門家経費・外注費を除いた部分で1億円以上の投資計画があること
  • 従業員の賃上げ目標を組み込んだ5年間の事業計画を策定していること

補助額・補助率

補助金の交付額は最大5億円で、補助率は対象経費の1/2(50%)です。

つまり、企業は計画した投資額の半分までを、国から補助してもらえます。

例えば、10億円の設備投資を行う計画で採択された場合、上限いっぱいの5億円が補助される可能性があります。

補助事業の実施期間は交付決定日から最長2年間で、採択後その期間内に計画した設備投資を実行し完了させる必要があります。

補助対象となる経費

補助の対象となる経費(補助対象経費)には、企業の設備投資に関わる様々な費用が含まれます。

補助対象となる経費の区分
  • 建物費: 工場や倉庫など事業拠点の新設・増築にかかる建設費用
  • 機械装置等費: 生産設備や装置、機械類の購入費・設置費用
  • ソフトウェア費: 業務システムの構築やソフトウェア導入にかかる費用
  • 外注費: 製品開発やシステム開発の一部を外部に委託する費用
  • 専門家経費: コンサルタントや専門家への報酬、アドバイザリー費用

一方で、人件費や原材料費などの運転資金的な費用は補助対象に含まれません。

大規模な設備投資の資金負担を軽減し、企業の挑戦を支援する狙いがある制度だといえるでしょう。

審査においては、提出された事業計画の成長戦略の妥当性や実現可能性、DXやGXといった先進的取り組みの有無、そして賃上げ目標の達成見込みなどが総合的に評価されます。

DX・GXとは?
DXはデジタル技術で業務やサービスを変革すること。GXは環境に配慮した経済活動へ転換することを指します。

単に投資額が大きいだけでなく、投資によってどのように売上高や企業規模が飛躍するのかを、定量的な根拠をもって明示することが採択のポイントとなります。

100億宣言で中小企業成長加速化補助金を支援してもらうための申請手順

100億宣言を行い、中小企業成長加速化補助金の支援を受けるための、具体的な申請手順を確認しましょう。

申請はオンラインシステム(jGrants)上で行うため、事前準備をしっかり進めることが成功のカギです。

補助金支援の申請手順

1GビズIDの取得
電子申請システムjGrantsの利用に必須のGビズIDプライムアカウントを事前に取得しておく


2GビズIDの申請ページへ遷移する
jGrantsにログイン後、補助金の検索機能を使って「中小企業成長加速化補助金」の申請ページを開く


3アンケート・申請種別の選択・申請書類を提出する
申請フォームに必要事項を入力し、事業計画書や決算書類など指定された書類をファイル添付して提出する


4申請する
入力内容と添付書類を最終確認し、jGrants上で申請を送信。締切間際の申請は避けることが重要

1. GビズIDの取得

補助金申請には、国の電子申請システム「jGrants(ジェイグランツ)」を利用しますが、利用にあたってはGビズIDプライムアカウントの取得が必須です。

jGrants(ジェイグランツ)とは?
国の補助金の申請や届出をオンラインで完結できる電子申請システム。GビズIDを使って利用します。

GビズIDの3つの種類
  • gBizIDプライム:代表者名義のアカウント。補助金申請など全ての行政サービスが利用可能
  • gBizIDメンバー:プライムアカウントに紐づく従業員用アカウント。利用できるサービスは限定的
  • gBizIDエントリー:オンラインで即日作成可能だが、利用できるサービスが限られる

プライムIDをまだ持っていない場合は、早めに取得手続きを行いましょう。

GビズIDプライムの取得申請はオンラインと書面郵送の2通りがあり、書面の場合は発行まで1週間以上かかることもあるので注意してください。

補助金の公募期間が限られていることを踏まえ、時間に余裕を持って準備してください。

2. GビズIDの申請ページへ遷移する

GビズIDプライムを取得したら、jGrantsのウェブサイトにアクセスしてログインします。

ログイン後、補助金の検索機能などを使って「中小企業成長加速化補助金」の申請ページを開きましょう。

該当する公募が開催中であれば、補助金名や公募IDで検索すると申請フォームに進めます。

公募要領等に記載された申請期間内に、忘れずに申請手続きを開始してください。

3. アンケート・申請種別の選択・申請書類を提出する

jGrants上の申請フォームで、必要事項を順番に入力・選択していきます。

入力が一通り終わったら、指定された申請書類をファイル添付して提出します。

事業計画書には、5年間の成長戦略や賃上げ計画、資金計画まで盛り込んだ詳細な内容をまとめる必要があります。

申請準備段階から専門家のアドバイスを受けるなどして、充実した計画書を用意しましょう。

また、100億円宣言そのものの申請も補助金申請と並行して行う必要があります。

まだ宣言を済ませていない場合は、先に100億企業成長ポータルサイトで宣言書を提出し、受理された上で補助金の申請に臨んでください。

4. 申請する

必要事項の入力と書類のアップロードがすべて完了したら、申請内容を最終確認します。

誤りや添付漏れがないことをチェックした上で、jGrants上で申請送信の手続きを行ってください。

送信が完了すると、受付番号が発行され、登録したメールアドレス宛にも申請受付の通知が届きます。

ただ、システムの混雑や不具合でログインできない事態が発生する可能性があるため、締切間際の駆け込み申請は避けましょう。

期限に余裕をもって早めに申請を済ませ、確実に受理されるようにしてください。

申請後は、事務局による審査が行われ、採択・不採択の結果が通知されます。

採択となった企業は交付申請・交付決定を経て事業を開始し、計画に沿ってプロジェクトを遂行してください。

100億宣言による中小企業成長加速化補助金の申請時の注意点

100億円宣言を行い補助金の申請を進めるにあたって、以下のような注意点にも留意しましょう。

制度を正しく理解し、想定外のトラブルを避けることが大切です。

補助金申請時の3つの注意点

1採択額=交付額ではない
補助金は事業完了後の精算で交付額が決まるため、採択された金額と実際に振り込まれる金額は異なる場合がある


2補助金は申請してすぐには交付されない
事業完了後の後払いとなるため、当面の設備投資資金は自己資金や借入金で賄う必要がある


31事業者につき1案件しか申請できない
1社で同時に申請できる案件は1件のみ。複数のプロジェクトがある場合は最も重要な1案件に絞る必要がある

採択額=交付額ではない

採択時に認められた補助金額(採択額)と、最終的に振り込まれる補助金額(交付額)は必ずしも同じではありません。

補助金は事業完了後の精算に基づき交付額が確定する仕組みになっているためです。

例えば、申請段階で補助対象経費を10億円と見積もり採択された場合、上限5億円の補助が認められたことになります。

しかし、事業で実際に使った補助対象経費が8億円にとどまった場合、交付される補助金も半額の4億円に減額されます。

補助金は実績に応じて支払われるため、当初予定より支出が減れば、補助金額も減る点を理解しておきましょう。

補助金は申請してすぐには交付されない

補助金は採択が決定しても、すぐに企業の口座に振り込まれるわけではありません。

補助金交付までの流れ
  1. 採択決定
  2. 交付申請・交付決定
  3. 事業実施(設備投資など)
  4. 事業完了・実績報告
  5. 検査・交付額確定
  6. 補助金交付(支払い)

上記の一連の手続きには時間がかかり、交付金の受領までに申請から1年近くかかるケースもあります。

そのため、企業側は補助金を事後にもらう形になる点に留意し、当面の設備投資資金は自己資金や借入金で賄う必要があります。

また、補助対象となる経費は交付決定後に発生した支出に限られるため、採択前に開始した事業の費用は補助を受けられません。

1事業者につき1案件しか申請できない

中小企業成長加速化補助金では、1社につき同時に申請できる案件は 1件のみと定められています。

仮に複数のプロジェクトで補助金活用を検討している場合でも、本補助金では最も重要な1案件に絞って申請する必要があります。

同一の事業者(法人)が公募期間中に複数の申請を行うことはできず、万一行った場合は申請自体が無効となる可能性がありますので注意してください。

計画段階で、自社はどの案件にこの貴重な補助枠を充てるか、戦略的に検討しましょう。

100億円宣言による補助金支援に関するよくある質問

100億円宣言および中小企業成長加速化補助金に関して、よく寄せられる質問をまとめました。

細かい疑問がある方は以下で解消しましょう。

100億円宣言に関するよくある質問

1補助金以外のメリットはなんですか?
公式ロゴマークの使用、限定支援策の活用、経営者ネットワークへの参加、中小機構による伴走支援などがある


2資本⾦1億円の会社でも宣言できる?
何らかの法律上で中小企業の範囲に入っていれば可能で、上場・非上場の別も問われない


3売上100億円達成までの期間は決まっている?
制度上の明確な期限はないが、10年以内での達成を想定して計画を立てる企業が多い


4100億宣言の申し込みはいつから?
2025年5月8日より開始されており、専用ポータルサイトから随時申請が可能


5他企業の宣言内容は見れる?
100億企業成長ポータルサイト上で、宣言を行った企業のリストと各社の宣言内容が公開されている

100億円宣言を行うことで得られる補助金以外のメリットはなんですか?

100億円宣言を行うメリットは、補助金の申請資格を得られることだけではありません。

補助金以外の主なメリット
  • 公式ロゴマークの使用: 名刺やサイトに掲載し、企業の成長意欲をPRできる
  • 宣言企業限定の支援策: 補助金や税制優遇措置など、国から重点的なサポートを受けられる
  • 経営者ネットワークへの参加: 経営者同士の交流会に参加でき、情報共有や連携のチャンスが広がる
  • 各種支援策の情報提供: 成長に役立つ様々な支援策に関する最新情報を入手できる
  • 中小機構による伴走支援: 経営課題に応じた専門家派遣など、継続的なサポートが受けられる

100億円宣言をすることで、単なる補助金の枠を超えた多面的な支援を受けられます。

資本⾦1億円の会社でも宣言できる?

資本金1億円の企業でも100億円宣言は可能です。

また、売上規模要件を満たせば宣言できるため、上場企業・非上場企業の別も問いません。

中小企業基本法など業種ごとの資本金要件では、資本金1億円の企業は業種によって中小企業に該当しない場合もあります。

しかし、租税特別措置法上の中小企業者など、他の定義では中小企業とみなされるケースがあり、その場合は宣言が認められます。

売上100億円達成までの期間は決まっている?

売上高100億円を達成するまでの期間について、制度上明確な期限が設けられているわけではありません。

ただし、一般的な目安としては約10年以内での達成を想定して計画を立てる企業が多いようです。

長すぎる計画だと実現性が低いと判断されかねないため、10年前後を一つの指標として現実的かつ意欲的な目標設定をすると良いでしょう。

100億宣言の申し込みはいつから?

100億円宣言の申請受付は2025年5月8日より開始されています。

2025年8月時点も、専用ポータルサイト上のフォームから、比較的簡単な手続きで随時申請できます。

自社が条件を満たすようであれば、タイミングを見て早めに宣言手続きを行うとよいでしょう。

他企業の宣言内容は見れる?

他社の宣言内容は閲覧可能です。

100億企業成長ポータルサイト上にて、宣言を行った企業のリストと各社の宣言内容が公開されています。

掲載企業は五十音順や業種、地域別に検索することもでき、誰でも自由に見れます。

宣言提出時に用いた様式の内容は原則すべて公表され、一部だけ非公開にすることはできません。

まとめ

国からの資金支援や周囲の協力を得られる「100億円宣言」による補助金制度は、成長意欲の高い企業にとってまたとないチャンスです。

とはいえ、大規模投資には自社のリソースや計画の練り込みが求められ、申請準備も簡単ではありません。

しかし、得られる支援の効果は非常に大きく、企業規模の飛躍的な拡大に直結します。

本記事の内容を参考に、ぜひ積極的な一歩を踏み出してみてください。

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著者情報

金融にまつわる様々な情報を発信しております。カードローン、キャッシングなどお金にまつわるノウハウなども解説しています。ぜひご覧ください。

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