従業員の育児や介護による離職は、企業にとって大きな損失であり、働きやすい職場環境の整備は喫緊の課題です。
両立支援等助成金は、まさにこうした課題を解決するために国が設けた制度ですが、種類は多岐にわたり、申請手続きの複雑さから活用をためらう担当者も少なくありません。
本記事では、両立支援等助成金の全コースの概要から、対象となる企業の条件、申請の流れ、そして失敗しないための注意点まで、網羅的にわかりやすく解説します。
制度の全体像を正確に理解し、自社に最適な助成金を見つけるための一助として、ぜひ最後までご覧ください。
両立支援等助成金とは?制度の目的・支援内容をわかりやすく解説

両立支援等助成金は、従業員が仕事と家庭生活を安心して両立できる職場環境の整備に取り組む事業主を支援するために、厚生労働省が設けている制度です。
目的は育児や介護、不妊治療、病気の治療といったライフイベントを理由に従業員が離職することを防ぎ、継続して働き続けられる社会を実現することにあります。
- 男性の育児休業取得の促進
- 育児・介護休業を取得しやすい環境整備
- テレワークや短時間勤務といった柔軟な働き方の導入
男性の育児休業取得の促進、育児・介護休業を取得しやすい環境整備など、幅広い取り組みが助成の対象となります。
企業にとっては、制度導入にかかる費用負担を軽減できるだけでなく、従業員の定着率向上や採用力の強化といった、経営上の大きなメリットにも繋がる重要な制度です。
両立支援等助成金を申請できる企業の条件
両立支援等助成金は、全ての企業が対象となるわけではなく、いくつかの基本的な要件を満たす必要があります。
申請の前提となる企業の条件について、具体的なポイントを4つ解説します。
1|両立支援等助成金は中小企業向け制度。対象となる資本金・従業員数の目安
助成金の主な対象である中小企業の定義、資本金や従業員数などの具体的な基準
2|雇用保険の適用事業主であることが必須
助成金の財源にもなっている雇用保険の適用事業所であることが絶対条件
3|過去に労働関係法令違反や不正受給がないこと
過去5年間の不正受給や重大な法令違反がなくクリーンな企業運営であること
4|助成対象外となるケース(大企業・派遣先企業など)
中小企業の範囲を超える大企業や派遣先企業といった対象外となる具体例
両立支援等助成金は中小企業向け制度。対象となる資本金・従業員数の目安
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する労働者の数 |
---|---|---|
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
両立支援等助成金の多くのコースは、原則として中小企業事業主を対象として設計されています。
自社が中小企業の定義に該当するかどうかは、下の表にある「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する労働者の数」のいずれかを満たしているかで判断します。
この要件は、申請を検討する上での最初のステップとなるため、必ず確認が必要です。
業種によって基準が異なる点に注意し、自社の状況を正確に把握しましょう。
雇用保険の適用事業主であることが必須
両立支援等助成金の財源は、事業主が納める労働保険料の一部から賄われています。
そのため、助成金を受給するための大前提として、雇用保険の適用事業主であることが必須条件となります。
労働者を一人でも雇用している事業主は、業種や規模にかかわらず雇用保険の適用事業主となる義務があります。
当然ながら、助成金の対象となる従業員自身も、雇用保険の被保険者でなければなりません。
未加入の場合は、管轄のハローワークで加入手続きを済ませることが先決です。
過去に労働関係法令違反や不正受給がないこと
助成金の申請を行う事業主は、健全な労務管理を行っていることが求められます。
そのため、過去に労働関係の法令で重大な違反を犯していないことが条件となります。
また、申請日の前日から起算して過去5年間に、他の助成金を含めて不正受給を行ったことがある事業主は対象外です。
労働保険料の滞納がある場合も申請は認められないため、日頃から法令を遵守したクリーンな企業運営が不可欠です。
助成対象外となるケース(大企業・派遣先企業など)
ここまでの条件を満たしていても、助成金の対象外となるケースがいくつか存在します。
中小企業の範囲を超えた大企業は、原則として助成金の対象にはなりません。
また、間違いやすいポイントとして、派遣労働者が自社で働いている場合、両立支援の取り組みは派遣元の責任となるため、派遣先の企業は助成金の対象外です。
暴力団関係事業主や、支給申請時点で倒産している事業主なども、当然ながら対象にはなりません。
両立支援等助成金のコースの種類と概要
両立支援等助成金には、企業の多様なニーズに応えるため、目的別に複数のコースが用意されています。
主要なコースの概要と、それぞれがどのような取り組みを支援するのかを解説します。
1|出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金):男性社員の育児休業取得と職場環境づくりを支援
男性従業員の育休取得と、それを促進するための研修や相談窓口の設置など環境整備への支援
2|育児休業等支援コース:育児休業の取得から復職、業務代替までを包括的に支援
育休復帰支援プランに基づく円滑な育休取得と職場復帰を包括的にサポート
3|育休中等業務代替支援コース:育児休業中の業務代替体制や手当支給を支援
育休取得者の業務をカバーする代替要員の確保や、代替手当の支給を支援
4|介護離職防止支援コース:介護休業の取得と復職、介護と仕事の両立を支援
介護支援プランに基づき、従業員の介護休業取得と仕事との両立支援への取り組みをサポート
5|不妊治療両立支援コース:不妊治療のための特別休暇制度の導入と活用を支援
不妊治療と仕事を両立させるための有給の特別休暇制度導入と、その利用促進を支援
6|柔軟な働き方選択制度等支援コース:テレワークや時差出勤など柔軟な勤務制度の整備を支援
テレワークやフレックスタイム制など、多様で柔軟な働き方を可能にする制度導入を支援
7|小学校休業等対応助成金(特例):臨時休校に対応した有給特別休暇制度の整備を支援
臨時休校などで子どもの世話が必要な従業員のための、有給の特別休暇制度導入を支援
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金):男性社員の育児休業取得と職場環境づくりを支援
出生時両立支援コースは、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場風土づくりを促進することを目的としています。
男性従業員が子どもの出生後8週間以内に、連続5日以上の育児休業を取得した場合に、事業主へ助成金が支給されます。
単に休業を取得させるだけでなく、育休取得を推進するための社内研修の実施や、相談窓口の設置といった環境整備の取り組みも評価の対象となります。
さらに、休業した男性従業員の業務を代替する他の従業員に対して、手当を支給した場合にも助成が上乗せされる仕組みがあります。
育児休業等支援コース:育児休業の取得から復職、業務代替までを包括的に支援
育児休業等支援コースは、従業員の円滑な育児休業の取得と、スムーズな職場復帰を包括的にサポートする制度です。
「育休取得時」「職場復帰時」など、フェーズごとに複数回の申請機会があるのが特徴です。
休業取得者との面談を通じて「育休復帰支援プラン」を作成・実施し、従業員が3ヶ月以上の育児休業を取得した場合に助成されます。
復帰後も、法を上回る短時間勤務制度の利用や、看護休暇制度の導入など、継続的な支援を行うことで追加の助成が受けられます。
育休中等業務代替支援コース:育児休業中の業務代替体制や手当支給を支援
育休中等業務代替支援コースは、育児休業を取得した従業員の業務をカバーする体制を整えた企業を支援します。
残された従業員の負担増という、育休取得推進における大きな課題に対応できます。
具体的には、休業者の業務を他の従業員が代替し、その業務見直しや効率化を行った場合や、代替要員を新たに確保した場合に助成金が支給されます。
業務をカバーした従業員に対して代替手当などを支給した場合には、手厚い助成が受けられます。
介護離職防止支援コース:介護休業の取得と復職、介護と仕事の両立を支援
介護離職防止支援コースは、従業員が家族の介護を理由に仕事を辞めることなく、働き続けられる環境づくりを支援します。
従業員との面談を通じて「介護支援プラン」を作成し、プランに沿って介護休業の取得や介護両立支援制度の利用をさせた場合に助成されます。
対象となる制度は、介護休業のほか、介護のための柔軟な勤務制度(例:時差出勤、短時間勤務)など多岐にわたります。
高齢化社会が加速する中で、優秀な人材の介護離職を防ぐために、企業が取り組むべき重要な課題を後押しする制度です。
不妊治療両立支援コース:不妊治療のための特別休暇制度の導入と活用を支援
不妊治療両立支援コースは、従業員が不妊治療と仕事を両立できるよう、休暇制度や柔軟な勤務制度を導入する企業を支援するものです。
不妊治療のために利用できる、有給の特別休暇制度などを就業規則に整備することが第一歩となります。
その上で、従業員に制度の利用を促し、実際に合計5日(回)以上利用させた場合に助成金が支給されます。
プライバシーに配慮した相談窓口の設置や、治療状況に応じた柔軟な勤務を認めるなど、従業員が安心して制度を使える環境づくりも重要です。
柔軟な働き方選択制度等支援コース:テレワークや時差出勤など柔軟な勤務制度の整備を支援
柔軟な働き方選択制度等支援コースは、育児や介護に限らず、全ての従業員が利用できる柔軟な勤務制度の導入を支援します。
対象となるのは以下のような制度です。
- テレワーク
- 時差出勤
- 短時間勤務
- フレックスタイム制など
制度を新たに導入し、就業規則に規定した上で、実際に従業員が利用した実績がある場合に助成対象となります。
働き方改革を推進し、従業員のワークライフバランスを向上させることで、生産性の向上や人材確保に繋げることを目的としています。
小学校休業等対応助成金(特例):臨時休校に対応した有給特別休暇制度の整備を支援
小学校休業等対応助成金は、新型コロナウイルスの影響で小学校などが臨時休業となった際に、子どもの世話をする必要が生じた従業員を守るために創設された制度です。
対象の従業員に対して、労働基準法の年次有給休暇とは別に、有給休暇を取得させた企業に支給されました。
従業員が安心して子どもの世話に専念できる環境を提供した企業を、国が支援する仕組みといえます。
しかし、現在では新規の申請受付は終了している点にご注意ください。
両立支援等助成金を活用することで得られる4つのメリット
両立支援等助成金の活用は、単に金銭的な支援が受けられるだけでなく、企業経営に多くのプラスの効果をもたらします。
ここでは、助成金を活用することで得られる代表的な4つのメリットについて解説します。
1|育児・介護による人材の早期離職を防止できる
経験豊富な従業員がライフイベントを理由に辞めることを防ぎ、人材の流出を阻止
2|柔軟な制度設計により採用力と企業ブランディングが向上
「従業員を大切にする会社」という客観的な証明となり、採用競争での優位性を確保
3|制度導入にかかるコストを助成金で補填できる
就業規則改訂や代替要員確保など、制度導入に伴う経済的負担の軽減
4|従業員の満足度や定着率を高めることができる
会社への信頼と愛着を育み、組織全体の生産性向上と好循環の創出
育児・介護による人材の早期離職を防止できる
最大のメリットは、経験豊富で優秀な人材の離職を未然に防げることです。
育児や介護といったライフステージの変化は、誰にでも起こりえます。
会社に両立を支援する制度と風土があれば、従業員は「この会社なら働き続けられる」という安心感を得られます。
結果、キャリアを諦めることなく働き続ける選択肢が生まれ、企業は貴重な人材の流出を防げます。
柔軟な制度設計により採用力と企業ブランディングが向上
働きやすい職場環境は、今や求職者が企業を選ぶ上で非常に重要な指標となっています。
両立支援等助成金を活用して制度を整備している事実は、「従業員を大切にする良い会社」であることの客観的な証明となります。
採用活動でアピールすることで、優秀な人材の獲得競争において大きな強みとなるでしょう。
また、企業の社会的評価が高まり、「ホワイト企業」としてのブランドイメージ向上にも大きく貢献します。
制度導入にかかるコストを助成金で補填できる
働きやすい環境整備の必要性を感じていても、コスト面で二の足を踏んでいる企業は少なくありません。
両立支援等助成金は、まさにコストに悩む企業の負担を軽減するために存在します。
就業規則の改訂を社会保険労務士に依頼する費用や、代替要員を確保するための人件費など、制度の導入と運用にかかる経費の一部を補填できます。
企業は財務的なリスクを抑えながら、必要な社内改革を進められるでしょう。
従業員の満足度や定着率を高めることができる
両立支援制度の充実は、従業員のエンゲージメント向上に直接的に繋がります。
会社が自分たちの生活やキャリアを真剣に考えてくれているという印象につながり、従業員の会社に対する信頼感を上げられます。
結果的に、従業員のモチベーションを高め、組織全体の生産性向上にも好影響を与えるでしょう。
両立支援等助成金の申請の流れ
助成金の申請は、一見すると複雑で難しそうに感じられるかもしれません。
しかし、全体の流れをステップごとに分解して理解すれば、計画的に準備を進めることができます。
1|ステップ1:助成金の対象コースと自社の該当条件を確認する
自社の課題に合ったコースを選び、支給要件や対象事業主の条件を詳細に確認
2|ステップ2:申請に必要な社内制度や就業規則を整備する
休業開始前に就業規則の改訂や労使協定の締結、従業員への周知を完了
3|ステップ3:対象社員と面談し、支援プランや制度を具体化する
対象者と面談し、休業期間や復職後の働き方などを盛り込んだ支援プランの作成
4|ステップ4:制度の導入や休業取得・復職など必要な取り組みを実施する
整備した制度に基づき、対象従業員が実際に休業や支援制度を利用する実績作り
5|ステップ5:労働局の指定期限内に支給申請書類を提出する
定められた申請期間内に、出勤簿や賃金台帳など必要書類を揃えて労働局へ提出
6|ステップ6:審査結果の通知を受け取り、支給決定後に振込される
労働局の審査を経て支給決定通知書を受領後、指定口座に助成金が振り込まれる
ステップ1:助成金の対象コースと自社の該当条件を確認する
申請準備の第一歩は、自社の課題や目的に合ったコースを選ぶことから始まります。
男性育休を推進したいのか、介護離職を防ぎたいのかなど、目的を明確にしましょう。
その上で、厚生労働省のウェブサイトやパンフレットで、選択したコースの支給要件や自社が対象事業主に該当するかを詳細に確認します。
ステップ2:申請に必要な社内制度や就業規則を整備する
助成金の多くは、法定を上回る両立支援制度の導入を要件としています。
申請に向けて就業規則に関連規定を明記したり、必要に応じて労使協定を締結したりする必要があります。
重要なのは、これらの制度整備を、従業員が実際に休業などを開始する「前」に完了させておくことです。
改定した就業規則は、労働基準監督署への届出と、従業員への周知を忘れずに行いましょう。
ステップ3:対象社員と面談し、支援プランや制度を具体化する
育児休業等支援コースや介護離職防止支援コースなどでは、対象となる従業員との面談が必須です。
面談を通じて従業員の状況や意向をヒアリングし、休業期間や復職後の働き方などを盛り込んだ支援プランを作成しましょう。
プランは形式的な書類ではなく、従業員が安心して両立できるための具体的な道筋を示す重要なものです。
プランの内容は、後の申請においても重要な評価ポイントとなるため、真摯に取り組む必要があります。
ステップ4:制度の導入や休業取得・復職など必要な取り組みを実施する
計画と制度整備が完了したら、次はいよいよ実行のフェーズです。
整備した制度を全従業員に周知し、対象となる従業員が実際に育児休業や介護休業を取得したり、両立支援制度を利用したりします。
助成金は、あくまで実際に行われた取り組みに対して支給されるため、この「実績」がなければ申請することはできません。
休業期間中の社会保険料の免除手続きや、復職に向けた情報提供なども適切に行いましょう。
ステップ5:労働局の指定期限内に支給申請書類を提出する
対象従業員の休業終了後など、各コースで定められた支給申請期間内に、必要書類を揃えて管轄の都道府県労働局へ提出します。
申請書に加えて、就業規則の写し、出勤簿、賃金台帳、支援プランなど、コースによって多岐にわたる書類が必要です。
申請期間は非常に厳格で、1日でも過ぎると受理されないため、徹底したスケジュール管理が求められます。
書類の不備や漏れがないよう、提出前に複数人でのダブルチェックを行うことをお勧めします。
ステップ6:審査結果の通知を受け取り、支給決定後に振込される
申請書類を提出すると、労働局による審査が行われます。
審査期間は数ヶ月程度かかるのが一般的です。
審査の過程で、内容確認のための問い合わせや、追加資料の提出を求められることもあります。
審査の結果、要件を満たしていると判断されれば「支給決定通知書」が届き、その後、指定した口座に助成金が振り込まれます。
万が一、不支給となった場合でも、その理由が記載された通知が届きます。
両立支援等助成金の申請で注意すべき5つのポイント
助成金の申請を成功させるためには、手続きの流れを理解するだけでなく、つまずきやすいポイントを事前に把握しておくことが重要です。
ここでは、申請準備を進める上で特に注意すべき5つの点について解説します。
1|制度の導入や就業規則の整備は休業取得の前に完了させる
最も重要な注意点、制度利用の実績より前に必ず就業規則の整備と周知を完了させること
2|同じ制度・同じ社員に対して他の助成金と併給できない場合がある
併給調整の対象かを確認し、複数の助成金の中から最も有利なものを選択
3|提出書類は細かい要件まで確認し、不備や漏れを防ぐ
不支給の大きな原因となる書類不備、最新マニュアルとチェックリストの活用
4|法令違反や過去の不正受給があると申請が通らない可能性がある
残業代未払いなど労務管理の不備や過去の不正受給がないか、事前の再点検
5|申請期限を過ぎると受け付けてもらえないのでスケジュール管理が重要
1日でも過ぎると受理されない厳格な期限、逆算でのスケジュール管理の徹底
制度の導入や就業規則の整備は休業取得の前に完了させる
助成金の対象となる取り組みは、対応する社内制度が整備された「後」に行われなければなりません。
例えば、従業員が育児休業に入った後に、慌てて就業規則を改訂しても、助成金の対象とはなりません。
必ず「制度の整備・周知」を先に行い、その後に「制度の利用」という手順を厳守してください。
同じ制度・同じ社員に対して他の助成金と併給できない場合がある
国が支給する助成金の中には、同じ取り組みに対して複数の助成金を重複して受給できない「併給調整」の対象となるものがあります。
例えば、ある従業員の育児休業に関して両立支援等助成金を受給した場合、同じ休業を対象としてキャリアアップ助成金などを申請することはできません。
どの助成金が自社の目的に最も合致し、有利な条件で受給できるかを事前に比較検討することが重要です。
複数の助成金活用を検討している場合は、特に注意深く要件を確認しましょう。
提出書類は細かい要件まで確認し、不備や漏れを防ぐ
申請が不支給となる理由の多くは、単純な書類の不備や記載漏れです。
- 出勤簿の押印漏れ
- 賃金台帳の計算ミス
- 必要書類の添付忘れ
労働時間や賃金の支払いを証明する書類は、整合性が取れているかを厳しくチェックされます。
厚生労働省のウェブサイトから最新の申請マニュアルをダウンロードし、チェックリストを活用しながら、一つひとつ丁寧かつ正確に準備を進めましょう。
法令違反や過去の不正受給があると申請が通らない可能性がある
助成金は法令を遵守している、健全な企業活動を支援するためのものです。
そのため、残業代の未払いや不適切な労働時間管理といった労働関係法令の違反がある場合、申請は認められません。
また、過去5年以内に意図的かどうかに関わらず、不正に助成金を受給した事実がある場合も対象外となります。
申請を考える前に、まずは自社の労務管理体制が適正であるかを再点検することが不可欠です。
申請期限を過ぎると受け付けてもらえないのでスケジュール管理が重要
各助成金コースには、それぞれ厳格な申請期限が定められています。
例えば、「対象者が職場復帰してから2ヶ月以内」など、起算日と期間が明確に決まっています。
期限はいかなる理由があっても延長されることはなく、1日でも遅れれば申請の機会そのものを失います。
日々の業務に追われる中で、気づいたら期限を過ぎていたという事態は絶対に避けなければなりません。
申請を決めた段階で、ゴールから逆算した詳細なスケジュールを立て、タスク管理を徹底しましょう。
両立支援等助成金に関するよくある質問
両立支援等助成金の検討段階で、多くの担当者様から寄せられる質問とその回答をまとめました。
細かい疑問点を解消し、スムーズな申請準備にお役立てください。
1|両立支援等助成金は厚生労働省のどの窓口に問い合わせすればいいですか?
企業の所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)が担当窓口
2|パート・アルバイトも対象になりますか?両立支援等助成金の対象者の範囲を教えてください。
雇用保険の被保険者であれば、パートやアルバイトなど雇用形態を問わず対象
3|看護休暇を導入した場合、両立支援等助成金の対象になりますか?
法定を上回る「有給」の看護休暇制度導入など、積極的な取り組みは対象の可能性
4|両立支援等助成金の2024年(令和6年度)と2025年(令和7年度)の違いや変更点はありますか?
制度は毎年度見直しがあるため、申請する年度の最新情報を公式サイトで必ず確認
5|個人事業主でも両立支援等助成金の申請は可能ですか?
労働者を雇用し、雇用保険の適用事業主であれば個人事業主でも申請可能
6|両立支援制度の一覧を確認できる公式サイトや資料はありますか?
厚生労働省の公式ウェブサイトで、最新の支給要領やパンフレットなどが確認可能
両立支援等助成金は厚生労働省のどの窓口に問い合わせすればいいですか?
両立支援等助成金に関する問い合わせや申請書類の提出は、企業の所在地を管轄する都道府県労働局が主な窓口となります。
具体的には、労働局内の雇用環境・均等部(室)が担当部署です。
申請を検討する際は、まず自社の管轄労働局のウェブサイトを確認するか、電話で相談することをお勧めします。
助成金に関する説明会が開催されている場合もあるため、情報を確認してみると良いでしょう。
パート・アルバイトも対象になりますか?両立支援等助成金の対象者の範囲を教えてください。
はい、対象となります。
両立支援等助成金の対象となる労働者は、正規雇用の従業員に限りません。
雇用保険の被保険者であり、期間の定めのない労働契約を結んでいるか、一定の条件を満たす有期契約労働者であれば、パートタイムやアルバイトといった雇用形態は問いません。
多様な働き方をする従業員を支援するという制度の趣旨からも、幅広い労働者が対象に含まれています。
看護休暇を導入した場合、両立支援等助成金の対象になりますか?
子どもの看護休暇や介護休暇は、育児・介護休業法によって事業主に導入が義務付けられている制度です。
そのため、単に法律で定められた通りの制度を導入するだけでは、基本的に助成金の対象とはなりません。
しかし、「有給」での看護休暇制度を導入し、実際に利用された場合などは、育児休業等支援コースの対象となる可能性があります。
法定基準を超える積極的な取り組みが、助成の対象として評価されると理解しておきましょう。
両立支援等助成金の2024年(令和6年度)と2025年(令和7年度)の違いや変更点はありますか?
助成金制度は社会情勢や政策の変更に合わせて、毎年度見直しが行われます。
そのため、支給要件の変更や助成金額の改定、コースの統廃合などが起こる可能性があります。
申請を検討する際は、必ずその年度の最新情報を厚生労働省の公式ウェブサイトで確認することが不可欠です。
前年度の古い情報や、非公式な情報サイトを参考にすると、要件を満たせず不支給となるリスクがありますので十分ご注意ください。
個人事業主でも両立支援等助成金の申請は可能ですか?
条件付きで可能です。
個人事業主であっても、労働者を一人以上雇用し、雇用保険の適用事業主となっていれば、法人と同様に助成金の申請対象となります。
雇用する労働者のための両立支援制度を導入することが目的のため、事業主本人や、事業主と生計を同一にする親族は助成の対象にはなりません。
両立支援制度の一覧を確認できる公式サイトや資料はありますか?
両立支援等助成金に関する最も正確で信頼性の高い情報は、厚生労働省の公式ウェブサイトに掲載されています。
ウェブサイトでは、各コースの詳細な要件を記した支給要領や、申請に必要な様式、書き方見本が記載されたパンフレットなどをダウンロードできます。
申請を検討される際には、公式サイトにアクセスし、最新の公式資料を熟読することから始めてください。
まとめ
本記事では、両立支援等助成金について、その目的から具体的なコース内容、申請の流れや注意点に至るまで、網羅的に解説しました。
助成金は単に企業のコスト負担を軽減するだけでなく、従業員の離職を防ぎ、働きがいを高め、企業の採用力やブランド価値を向上させるための戦略的なツールです。
手続きが複雑に感じられるかもしれませんが、一つひとつのステップを丁寧に進め、要点を押さえることで、確実に活用することができます。
この記事が、貴社にとって働きやすい環境づくりの第一歩を踏み出すきっかけとなり、制度を最大限に活用するための一助となれば幸いです。